ヨイトマケの歌

これは随分と昔の話です。高校に入ってすぐ、はじめてのHRの時のこと。一人一人自己紹介をするじゃないですか。だいたい。どこから来たとか。何が趣味だとか。まあそんな話がひとしきり続いたと思ってください。
やがて最後の方にさしかかった時、というのもだいたい最初はあいうえお順に座ってますから、Yなんかで始まる名前の人はかなり後の方なのです。

彼は突如立ち上がったかと思うと、好きな歌をうたいますと呟きました。ほほう、これはこれはと喜んだ途端、彼はおもむろに「ヨイトマケの歌」を歌い始めたのです。

これは普通、高校生が歌う種類のものではありません。かなり驚きました。日雇い労働者の歌です。かつて一日の賃金が240円だったので、半ば差別的にニコヨンと呼ばれていました。
こういう曲を高校入学早々の自己紹介の時にうたうというのはかなり、画期的なことでした。というより度肝を抜かれたね。
それ以上にぼくは彼の声に聴き入ってしまったのです。

歌詞を知らない方のために紹介します。これは当時丸山明宏、今は美輪明宏という名前の歌手が作詞、作曲したものです。一度くらいは聞いたことがあるんじゃないかと思いますけど…。

父ちゃんのためなら エンヤコラ
母ちゃんのためなら エンヤコラ
もひとつおまけに  エンヤコラ

今も聞こえる ヨイトマケの唄
今も聞こえる あの子守唄
工事現場の昼休み
たばこふかして 目を閉じりゃ
聞こえてくるよ あの唄が
働く土方の あの唄が
貧しい土方の あの唄が

子供の頃に小学校で
ヨイトマケの子供 きたない子供と
いじめぬかれて はやされて
くやし涙に暮れながら
泣いて帰った道すがら
母ちゃんの働くとこを見た
母ちゃんの働くとこを見た

姉さんかぶりで 泥にまみれて
日にやけながら 汗を流して
男に混じって ツナを引き
天に向かって 声をあげて
力の限り 唄ってた
母ちゃんの働くとこを見た
母ちゃんの働くとこを見た

実際はもっと長いのです。たしかその時、Yくんは3番までしっかり歌いました。
感動したなあ。

今から実に半世紀前の話です。
あれ以来、丸山明宏(美輪明宏)はぼくの中にしっかりと刻印されました。

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