檸檬

梶井基次郎の小説『檸檬』を今年も授業でやりました。
実に不思議な味わいに満ちた作品です。
安部公房の短編『赤い繭』とセットになっているのはなぜなのかな。
どちらもギリギリまで引き絞った矢の先端に触れると、死に誘われるような魅力に満ちています。

表現が美しい。
三高時代の心象風景が目に見えます。
冒頭の一節…。

えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。

人はいつも不吉な塊に魅入られてしまっているものなのかもしれません。
その不安を消し去るものがどうしても必要なのでしょう。

梶井にとってそれは丸善の棚から出した画本の上に置かれるべき檸檬でした。
紡錘形のあの形のなかに、この世の全ての憂愁をしまいこんで屹立する果実…。
解決への糸口は色なのか、それとも形なのか。

飽きることのない魅力的な小説だと思います。

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