人生の救い

作家車谷長吉が亡くなったのは、今から2年前です。
誤嚥による窒息死でした。
彼は重度の蓄膿症で、鼻から息が出来ませんでした。
手術をすればなおるかもしれない。
しかし目の神経を切ってしまう可能性が大きかったのです。
それで諦めたと綴っています。

『赤目四十八滝心中未遂』で直木賞を受賞。
学校では全く扱われることのない作家です。
なぜか。
あまりにも毒が多すぎる。
若い生徒には刺激が強すぎるのです。

この本は朝日新聞日曜版に連載していたお悩み相談のコーナーをまとめたものです。
彼の回答だけをピックアップして、一冊にしました。
一言でいえば、人生に対する強い諦念に裏打ちされています。
あまりに純粋で、息苦しい。
それが魅力です。

今でも読む人がいるのでしょうか。
朝日文庫に入っています。
久しぶりに、あちこちを拾い読みしました。

教え子の女子生徒が好きで好きで堪らず、情動を抑えられません。どうしたらいいのでしょうかという40歳の高校教師の深刻な悩みに…。
破綻して、職業も名誉も家庭も失った時、はじめて人間とはなにかということが見えるのです。あなたは高校の教師だそうですが、好きになった女生徒と出来てしまえばよいのですと、けしかけています。

この世の苦しみを知ったところから真の人生が始まるという彼の回答には、車谷長吉という人間の全ての思いがこもっています。

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