雁風呂

落語には随分地味な噺もあります。
それでいて、どこか心に残るのです。
その一つがぼくにとってはこの「雁風呂」です。
上方では桂米朝が、東京では六代目三遊亭圓生が好んでやりました。

元々、講談からきたという説もあります。
東北の民話に題材をとった噺です。

秋にやってくる雁は、木のかけらを口にくわえ、途中、疲れるとそれを海面に浮かべて休息をとると信じられていました。
日本までたどり着くと、一木(ひとき)の松にとまったかれらは、それを浜辺に落とします。

やがて春になり、再び木片をくわえて海を渡るのです。
海岸にまだ残っていると、それは日本で死んだ雁が残していった木ぎれということになります。
そこで哀れな雁を供養するために、村人は流れ者などに木片で焚いた風呂を振る舞ったというのです。

この民話を黄門、水戸光圀と大阪町人、淀谷辰五郎との出会いとからめて一つの噺にしたのが「雁風呂」です。
いつかやりたいと思ってはいるものの、さてかなうものかどうか。
仄かな詩情がこの民話にはあるように思います。

今では柳家小満ん師匠が時々おやりになっているようです。
一度、お聞きになってみてはいかがでしょうか。

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