銀の匙

伝説の本です。
夏目漱石が絶賛しました。
いまだに、この小説は残っています。
それも実に大切に扱われているのです。

灘高校の国語の先生が3年間にわたってこの本一冊だけで授業をしたというのも、近年話題になりました。
中勘助という人の他の作品がそれほどに読まれているとも思えません。
魅力がよほどあるにちがいないのです。

子供時代の懐かしい思い出が実にきめこまかく語られます。
なかなか開かなかった古い茶箪笥の抽斗に入っていた銀の匙。
身体の弱かった男の子は伯母さんの愛情に包まれて育ちます。
そこで見た外の風景。

子供の持つ繊細な感受性がこれでもかというくらい、正確に描写されます。
後半は次第に成長し、学校へ行くようになってからの様子です。
先生との思い出や、級友とのつきあい。
さりげない日常が、どれほど貴重なものであるのかを実感させます。

こうした風景がかつてこの国にあったということに今ではむしろ不思議な気さえします。
抒情と簡単には言い切れません。
確かに懐かしさはある。
しかし子供の心にうつった子供の風景をそのまま捉えることがどれほど難しいことか。

この風景は決してセピア色に変色してはいません。
まさに今の鮮やかな色です。
そこがこの小説の魅力ではないでしょうか。
これからもずっと読み続けられる作品だと断言できます。

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