Book一覧

落語の国の精神分析

ある大学の入試問題に、精神分析家、藤山直樹の『落語の国の精神分析』が出題されていました。 以前読んだ記憶があるものの、その大部分を忘れていたのです。 あらためて、じっくりと文章を読むにつれ、事実を正確に描写するというのはこういうことなのだと実感した次第です。 落語には何かを演じようとする自分と、見る観客を喜ばせようとする自分の分裂が存在する。 それは「演じている自分」とそれを「見る自分」の分裂であり、世阿弥が「離見の見」として概念化し...

山の人生

柳田国男の文章の中で一番好きなのがこれです。 晩年の回顧録『故郷七十年』の中にあります。 こんなことが本当にあるのかと最初読んだ時に思いました。 とても信じられない。 十三になる男の子ともらってきた同じ年くらいの女の子。 男は山の炭焼き小屋で一緒に育てています。 どうやっても炭は売れず、空手で戻ってくると、飢えきっている子供の顔も見られずに昼寝をしてしまう。 眼が覚めると、小屋の口いっぱいに夕日がさしていました。 秋の末の...

銀の匙

伝説の本です。 夏目漱石が絶賛しました。 いまだに、この小説は残っています。 それも実に大切に扱われているのです。 灘高校の国語の先生が3年間にわたってこの本一冊だけで授業をしたというのも、近年話題になりました。 中勘助という人の他の作品がそれほどに読まれているとも思えません。 魅力がよほどあるにちがいないのです。 子供時代の懐かしい思い出が実にきめこまかく語られます。 なかなか開かなかった古い茶箪笥の抽斗に入っていた銀の...

点と線

松本清張の小説『点と線』は時刻表を縦横に使い切った作品の一つです。 昭和32年から33年にかけて雑誌「旅」に連載されました。 この年は彼にとって記念すべき年でもあります。 『眼の壁』『ゼロの焦点』など、名作が次々と発表されました。 『点と線』は映画化もされ、後に生誕100年を記念してテレビドラマにもなりました。 鹿児島本線、香椎駅から少し離れた海辺でおこる情死事件を扱ったものです。 福岡署の古参刑事、鳥飼重太郎と警視庁捜査二課の刑...

吾輩は猫である

久しぶりに読み返しました。 言わずと知れた夏目漱石の処女作です。 誰もが知っています。 しかし最後まで読み切ったという人に、あまり出会ったことがありません。 不思議な本です。 今となっては難しい。 注釈なしに読むことは至難でしょう。 言葉だけじゃない。 世態、風俗、人情、全てが変わってしまったのです。 登場人物が実に愉快です。 ご隠居さんのところにやってくる熊さん、八つぁんのパターンかな。 まさに落語の世界そのもので...

影響力の武器 

昨日からずっとこの本を読んでました。 実に興味深いテーマです。 社会心理学の分野に属するものです。 要約すると、人間はどのような行動をとる生物なのかというのが主題です。 人の態度や行動を変化させる心理的な力とは何か。 心の中をここまで深く読み取られてしまうと、正直つらいものがあります。 ものを売る人は人間の深層心理に訴えます。 人にものを頼むときにはどうすればうまくいくのか。 社会心理学者の術中にはまれば赤ん坊の手をひねる...