コラム

新海誠展

今や、知らない人はいない存在です。 「君の名は」の大ヒットは彼を宮崎駿と並ぶ存在にしました。 しかし数年前には誰も知らなかった。 そのことに興味を覚えます。 アニメ好きの息子が、これ見てみたらと貸してくれたのが、最初の短編「ほしのこえ」でした。かなり以前のことです。 絵のタッチが生硬で、とても短いものでした。 お金がないなかで、全部自分一人で作ったという話も聞きました。 宇宙と地上に別れた男女の心の交感をどう描くかというのがテーマです。 はじめて、こういう感覚のアニメを見ました。 永遠という言葉が頭の中に何度も浮かびました。 小説も読んだらといわれて、借りた記憶があります。 しばらく後「雲のむこう、約束の場所」も見ました。 これはかなりしっかりした作品でした。 高い塔や津軽湾といったいくつもの装置が、南北に分断されたこの国に登場します。 不思議な味わいの作品でした。 この頃、彼は一部のマニアだけに知られた存在でした。 しかしその後の活躍は誰もが知っているところです。 「君の名は」も封切り直後に映画館で見ました。 ぼく個人としては『...
お知らせ

益久染織研究所

奈良へ行くたびにこのお店に寄っておりました。 何回訪れたことか。 もちいどの通りにある広くて大きな店舗でした。 法隆寺のそばにもお店があります。 こちらがどうやら本家のようです。 ところがいつの間にかもちいどの通りにあったのが閉じてしまい、三条通りに移転しました。近鉄奈良からJR奈良へ向かう道の途中です。 こちらはかなり狭い。 売り場の面積が20分の1くらいになりました。 中目黒に新しいお店ができたのはつい数年前のことです。 東京に出店すると聞いて、少しほっとしたようです。 奥様はせっせとこちらへ通うようになりました。 もともと、天然素材の自然の糸だけを扱っています。 この研究所は綿花の栽培までやっているという、異色のワークグループなのです。 たまたま今年の夏に出かけた時、このお店で買った素材でつくったポーチを持参したところ、ぜひ写真を撮らせてほしいということだったとか。 そこで撮影した数枚が、たまたま同研究所のブログに掲載されていました。 友人が偶然みつけてくれたのです。 奥様の趣味もどんどん広がる一方です。 そのかたわら、ぼくの肩身...
コラム

セミセルフレジ

時代というのはどこまで変化していくものなんでしょうか。 いつも利用しているスーパーがあっという間に、このタイプのレジに変わりました。 商品のスキャンまではお店のスタッフがしてくれます。 しかしその後の支払いや精算は全て自分で行います。 説明のためのスタッフがついていたのは数日だけでした。 あとは全部お店で対応しています。 特に大きな混乱はないみたい。 むしろ、店員がお金に触れず、衛生的だという声の方が大きいようです。 並ぶ時間も短くなりました。 なるほどと感心していたら、駅前にできた別のスーパーもこの型のレジでした。 フルセルフには戸惑う人たちもセミセルフなら大丈夫みたいです。 きっとそのうち大半のスーパーがこれになるのかも…。 なんでもお店にしてもらう時代はとうに去ったのでしょう。 人件費が一番高いと言われています。 導入にかなりのコストがかかっても、長い目でみれば大きなメリットがあるのかもしれません。
お知らせ

永フェス落語会

土曜日に久しぶりの落語会があります。 今回は永山フェスティバルへの参加ということになりました。 はじめてのホールで一席やらせていただきます。 どんなところなんでしょうか。 2人で1時間というお話でした。 ぼくは前座をつとめますので、ごく短い噺を…。 どんなのがよろしいでしょうかと伺ったら、秋のネタをというご注文。 となれば、「目黒のさんま」しかないかな。 これはあちこちで随分とご披露させていただいてます。 名作中の名作ですね。 世の中というものを知らないお殿様が、実に無邪気で愛らしい。 少しでも楽しくできたらそれでいいんじゃないのかな。 地噺の要素が強いので、退屈にならないようにしないと…。 一日一笑というのが、これからの人生のテーマです。 とにかく新しいものに興味を示して、首をつっこみ、楽しく笑うこと。 「今日の私は新鮮だぞ」という心意気がとにかく大切なのです。
Note

バカロレア

フランスの高校はこの試験を準備する機関として位置づけられているといってもいい。 『哲学する子供たち』を書いた中島さおりさんは、そう断言しています。 部活も文化祭も体育祭も特にない。 入学式もやらない。 とにかくバカロレアのために、皆勉強するというわけです。 この試験、なんとナポレオンが始めたそうな。 日本でも最近は国際バカロレアという言葉が飛び交っています。 あるいは国立大学をはじめとするセンター入試の内容を大きくかえる動機にもなっているとか。 根幹はなにか。 つまり自分の頭で考えるということなのです。 記憶力だけをただ試しても、実力を知ることにはならないというのです。 バカロレアの試験は全て論述式か口頭試問です。 四択で答えるなどということを彼の国の人たちは考えません。 それというのも、哲学が全ての授業の基礎にあるからです。 参考までに問題を…。 自由とは、何の障碍もないということか。 不可能を望むことは不条理であるか。 言語は道具でしかないのか。 科学は事実の証明に限られるのか。 我々は国家に対していかなる義務を負うか。 認識...
Book

吾輩は猫である

久しぶりに読み返しました。 言わずと知れた夏目漱石の処女作です。 誰もが知っています。 しかし最後まで読み切ったという人に、あまり出会ったことがありません。 不思議な本です。 今となっては難しい。 注釈なしに読むことは至難でしょう。 言葉だけじゃない。 世態、風俗、人情、全てが変わってしまったのです。 登場人物が実に愉快です。 ご隠居さんのところにやってくる熊さん、八つぁんのパターンかな。 まさに落語の世界そのものです。 漱石は三代目小さんを非常に高く買っていました。 相当に彼は落語を聞いてますね。 後半、水島寒月がバイオリンを買うシーンなどでは、「黄金餅」の道中付けが応用されています。 とにかく登場人物がユニークです。 珍野苦沙弥先生以下、迷亭、水島寒月、越智東風、八木独仙。 みな、高等遊民ばかり。 駄弁を弄する手合いというのはこの人たちのことを言うのかもしれません。 銭湯のシーンといい、苦沙弥先生の子供たちに対する愛情あふれる視線といい、一読の価値があります。 その他、次々と出てくる市井の民が実に愛らしい。 中でも圧...
Note

ソーシャルメディアの時代

新聞がメディアの王道であった時代。 考えてみれば、牧歌的な世の中だったといえるのかもしれません。 総務省情報通信政策研究所の調査(2016)によれば、10代の平日1日のテレビのリアルタイム視聴は89.0分、ネット利用は130.2分、新聞閲読は0.3分だそうです。 実感からすると、ネットの利用時間はもっと遙かに長いもののようにも思えます。 新聞はラ・テ面(ラジオ、テレビ欄)をちらっと見るだけということでしょうか。 それにしても0.3分とは驚きました。 NIE(Newspaper in Education)などという言葉を使っている身としては、怖ろしい気さえします。 論文を書くために新聞を読み、論理的思考を学ぶというのも、今では遠い目標なのかもしれません…。 勿論、新聞だけが論理性を身につけるためのメディアだという訳ではありません。 しかし文章力を身につけるには適した素材です。 語彙力を増やすための装置でもあります。 確かにインタラクティブな発信を保証するという意味で、ソーシャルメディアは画期的な力を持っています。 しかしどこまで情報の信憑性、信頼性...
コラム

パドリーノ、ポモドーロ、ソップレッサータ

このタイトルをみて、すぐにこれが欧州のサッカーチームでないということに気づけば、それだけで大したものです。 ぼくには最初なんのことかわかりませんでした。 さらにカポコッロ、ストリアータ・バゲットなどなど…。 これはいずれもグルメなサンドイッチ店に掲げられたパンと食材の名前だそうです。 つい先日、NYタイムズの記事の翻訳が新聞に載っていました。 ある女性と食事をしにおしゃれなサンドイッチ店に入った時の様子です。 彼女の表情がすぐに凍りついたとか。 つまり彼女には判読できない文化的記号が店内にあふれていたのです。 ある階層に育っていなければ、出会うことのない食材の名前。 「おまえはここでは歓迎されていないぞ」というサインが店の中に満ちあふれていたというわけです。 階層社会の複雑な網は誰かをゆすり落とすための装置にもなります。 高級スーパー、ホールフーズ・マーケットで買い物をする人たちの8割は高学歴の人々で占められているといいます。 相互の絆を深め、無縁の人々を遮る。 この目に見えない障壁が、ある意味で一番怖ろしい階層社会の産物なのかもしれません...
Book

影響力の武器 

昨日からずっとこの本を読んでました。 実に興味深いテーマです。 社会心理学の分野に属するものです。 要約すると、人間はどのような行動をとる生物なのかというのが主題です。 人の態度や行動を変化させる心理的な力とは何か。 心の中をここまで深く読み取られてしまうと、正直つらいものがあります。 ものを売る人は人間の深層心理に訴えます。 人にものを頼むときにはどうすればうまくいくのか。 社会心理学者の術中にはまれば赤ん坊の手をひねるようなものです。 例えば、どうしても頼みたいことがある場合には、まず途方もないことからお願いをする。 当然のように相手は拒否します。 そこで条件をさげ、譲歩する。 するとなぜか容易に承諾してくれるものなのです。 あるいはどんなものでもよい。 先にささやかなプレゼントをする。 すると相手に精神的なプレッシャーを与えることに成功する。 必ず何かをこの人のためにしてあげなくてはという精神状態になります。 人は一貫性を重んじようとするあまり、自分で一度決めたことや書いたことの線にそって行動しようとします。 さらに自分と同...
Book

ジャコメッティとともに

6月14日から国立新美術館でジャコメッテイ展が始まりました。 これは開館10周年を記念した展覧会だそうです。 この芸術家の横顔を表している作品は矢内原伊作の『ジャコメッティとともに』につきると思います。 ぼくがこの本に出会ったのは実に35年ほど前のこと。 こんなにすごい本があるのかというのが、その時の率直な感想です。 たまたま書きとどめたものがありました。 そのまま載せさせてください。 ジャコメッティは20世紀を代表する彫刻家です。 あの細い独特の造形を一度見たら、忘れることはありません。 パリのアトリエを訪れた矢内原は、そこでこれから起こることを全く予感できませんでした。それほど出会いは衝撃的だったのです。 一枚の肖像画を描いてもらうために、矢内原は毎日彼のアトリエを訪れます。 しかし絵は完成しません。 真摯に対象と向き合う芸術家は、何度もキャンバスを白く塗りつぶしてしまうのです。 しまいには彼の妻と懇ろになる矢内原。 しかし芸術家はそのことに腹をたてることもなく、むしろ喜びさえします。 この本はぼくにとってとても大切なものです。 しかし筑摩書房は...