定年、気がつけば二人旅 吉武輝子 ミネルヴァ書房 2000年9月

評論家、吉武輝子がある時、豪華客船上で行われた講演会に講師として招かれます。タイトルは「定年後の夫の生き方、妻の生き方」というものでした。
そこに集まったのは定年を間近にした360人の夫婦。これはその時出会った多くの人々の軌跡を描いたルポともいえるものです。
定年を間近にした夫婦の生き様は、まさに現代日本の象徴でもありました。
背景には吉武さん自身の夫との生活が追想されます。子供を産むために会社をやめ、さらに仕事を辞めた夫とどのように向き合えばよかったのか。
看護婦として父親を看取った娘とともに、一人の女として妻として、自分はどういう人間であったのかを再検証していきます。
ここには具体的なたくさんの事例が示されています。いずれも男社会の中で、男性達が仕事を辞めた後、どれほど惨めな境遇に陥っていくのかということも示されています。
主婦と母親だけの役割から抜け出て、夫婦という新しい単位に戻るためには、何が必要なのかを一つ一つ書き込んである点も新鮮でした。
たとえば、その一つに互いの名を呼び合うということもあります。あるいは小さなことを誉め合うということも大切なことです。
あるいは介護の問題を女性だけに任せてはならないという基本なども示されています。
誰もがたどる道だといえば、確かにその通りです。しかし地域と生きている女性達に比べて、男性のひ弱さをあらためて感じるいい機会になりました。
非常に真面目な視点で自己というものを分析した吉武輝子という人に心から感心した次第です。

シェアする

フォローする