顔 横山秀夫 徳間書店 2002年10月

著者の小説はこれで3冊目です。『動機』に続いて『半落ち』。この『半落ち』という作品は、その設定に少し無理があるのではないかと感じました。脊髄液の移植というテーマはかなり医学的にも、問題があったようです。
今回は婦人警察官が主人公です。犯人の似顔絵を描くという鑑識課の仕事に従事しています。
しかし顔が全く似ていないという理由で、後につかまった犯人の写真から似顔絵をもう一度描かされるという屈辱的な処遇も受けました。
その後、精神的に不安定になり半年も休職した後、閑職に左遷されます。
作品全体はいくつかの小品が、同じ主人公の動きとしてまとめられています。短編集としても読めるものです。
通読していて感じるのは、警察組織が男性中心の社会であるということです。そこでは女性の警察官の働く場が限定されています。
ある日交番が襲われ、銃を強奪されます。しかしその犯人に警察官の制服を横流ししていた者が、県警内部にいました。そのことが外にもれることを怖れた刑事本人は、主人公が偶然犯人と対峙した瞬間、彼女を助けるということを名目に、相手を射殺してしまいます。
もちろん、警察発表は正当な銃の使用という表向きの会見に終始します。しかし実態は犯人の口封じでした。
そのことを推理した彼女は警察そのものへの愛着を失いかけていきます。
警察内部の実態がよく描けていると感じました。言葉の使い方や、新聞記者との対応など、まさに作家自身の体験によってしか著せないところです。

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