あこがれ 川上未映子 新潮社 2015年10月

小説を集中的に読みたくなりました。殊に今まであまり読んでいなかった女性作家の作品を選んでいます。
この人のものは初めてでした。
読後感が爽やかです。小学校4年から6年生にかけての男女ふたりの心理描写が中心です。
どちらもそれぞれの父親と母親を早くに失い、その分だけ、大人の世界に対する視点も確かなものになっています。
第一章の「ミス・アイスサンドイッチ」と第二章の「苺ジャムから苺をひけば」の間には発表に2年間のブランクがあります。
その間に、作者の中で二人の関係が醸成していったということなのでしょうか。
会いたい人にいつでも会えると思っていると、人はあっという間にいなくなってしまうという死生観には感じるところがありました。
子供の世界だからといって、侮ってはいけません。感受性の鋭敏さには驚かされます。
少し乱暴なことを言わせてもらうなら、小説は今や女性の書き手のものではないでしょうか。男には書けない心理の襞が、実にみごとに描かれています。
これだけ繊細に描写されると、男はどうしていいのかわからなくなります。
政治や経済から遠く離れて、人間を見つめ直すとき、生の不安やよろこびを強く感じることができる存在は女性そのものなのでしょう。
身体感覚がそのように世界に向けて開かれているといっても過言ではないと思います。
いい小説を読みました。
手にとってよかったです。
子供の心の中に素直に入っていけました。

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