お能 老木の花 白洲正子 講談社 2007年4月

筆者が二代目梅若実について能を習い始めたのは4歳の時でした。それからずっと能に親しみ、多くの舞台に出ています。その当人が書いたエッセイだけに、リアリティに満ちています。
実際に舞った人だけにしか書けない内容です。お能の見方や、幽玄、装束、面などについて独自の視点から、彼女の見識を披露しています。
難しい言葉は一切ありません。それだけでもすごいことです。読んでいても思わずうならされるところばかりです。
後半には、梅若実にインタビューした時の聞き書きが掲載されています。
これが実に面白い読み物になっています。ある時、彼女が世阿弥の『花伝書』を持っていった時、そういうものがあると聞いてはいたが、未熟な自分が読めるような本ではないと呟く梅若実の姿が描かれています。
白洲さんは恥ずかしくなって、黙ってその本を家に持って帰ったそうです。
能楽師にとって、能はある種の職人芸のようなものであり、書物で学ぶものではなかったのです。世阿弥が書いた内容は、既に彼の身体に宿っていたという風に考えるのが自然なのでしょう。
この本の存在は先日読んだ、梅若玄祥さんの『まことの花』に教えられました。白洲さんは女性でありながら、みごとな能を演じた人だという記述がなければ、手にすることはなかったと思われます。
いい本にめぐり会えました。
本との縁は本当に大切なものです。

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