君たちが知っておくべきこと 佐藤優 新潮社 2016年7月

副題に未来のエリートとの対話とあります。
これは灘高校の生徒と膝詰めで話し合った対話集とでもいったらいいのでしょうか。
ユニークな構成の本です。
筆者は一種の焦りを持ちながら、エリートと呼ばれる彼らに信頼をおこうと必死になっているように思えました。

日本では選良に与えられた義務という発想をあまり声高に語りません。
しかしヨーロッパではごく普通にノブレス・オブリージュという言葉を使います。
選ばれた人間は、とてつもなく強制された義務を、未来に負わなければならないという意味です。

灘高校の生徒達は必死になってこの作家に食いつき、そこから何かを得ようとします。
その真摯な態度がとてもいい。
歴史を中心にテーマが話し合われますが、政治、経済、さらには日々の振る舞いに至るまで内容は多岐にわたります。

筆者が歩んできた過去を少しでも能力のある、若い生徒達に話してあげようとする態度には共感しました。
むしろ、彼自身が生徒達に話すことで、インスパイアーされている側面も多々見受けられます。
今後、どうやって勉強を続けていったらいいのか。
何を信じて生きていけばいいのか。

できないことは約束をしないといったごく基本的な人生訓までを含めて、味わいのある本になっています。
学ぶことは己を知ることであり、絶望の淵に至らずにすむ、一つの方法なのかもしれません。
佐藤優の持つもっともやさしく素直な側面がよく出ています。
彼の語り口がとても印象的でした。

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