なぜ柳家さん喬は柳家喬太郎の師匠なのか?

8月に出版された本です。
不思議なタイトルそのままの内容です。
全く違う味わいを持った師匠と弟子の出会いから、今日までの経緯を綴ってあります。
15歳しか年の差がないというところから、師匠さん喬の複雑な胸中も垣間見えます。

嫉妬に近いものもあったとか。
しかしここで弟子を潰してはいけないと自戒し、沈黙を続けます。
さん喬は苦しかったに相違ない。
それでも余計なことは言いませんでした。

喬太郎が新作に傾き過ぎた時も、席亭がよく寄席に使ってくれた時も、師匠はほんのわずかのこと以外は口にしなかったそうです。
しかし喬太郎はその心中を見抜き、すばやく行動していったのです。
そこがこの2人のすごいところかな。

大師匠、小さんならばどのように演じたのか。
さん喬にはそれがいつもついて回ります。
「うどん屋」を小さんのように完成させたい。
余計なことは一言も付け加えたくない。

初天神に出てくる子供も、現在のようなこまっしゃくれたのにはしたくない。
どこまでも父と子の風景にとどめる。
さん喬の意志はつねに小さんに通じます。

それに比べれば喬太郎は自由です。
それが時に師匠の心につきささる。
そのあたりの葛藤がみごとに描かれています。
しかしいい師弟愛だと感じました。

喬太郎を総領弟子にとったことで、さん喬の世界も広がった。
昨今は人情噺ばかりを要求されて、少し食傷気味になっているようです。
棒鱈、徳ちゃんのさん喬も寄席の外でみせてもらいたい。

逆にいえば、喬太郎が棒鱈や徳ちゃんをやり始めた時が、一つの転回点なのかもしれません。
巻末に2人の持ちネタ一覧があります。
じっくり検証してみるのも一興でしょう。

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