誰がうまいのか…

これくらいの難題はないでしょうね、おそらく。
それぞれの聞き手が勝手なことを言うに違いありません。
いつの時代のどの噺と限定しても無理でしょう。
以前は録音そのものが大変でした。

今のようにすぐれた機材はなかったですし…。
昔の噺家の録音を聞いていると、実にイライラさせられることが多いのです。
それも含めて、さて誰がうまいのか。
まさに難問中の難問です。

ぼくはそんなに聞いた訳ではありません。
わずかにここ10年くらいの話です。
それ以前にも聞いてはいましたが、集中して聞くようになったのは、ここ10年ぐらいでしょうか。
小三治ばかりを聞いていた時期もあります。

円生、志ん生、文楽、三木助、小さん、志ん朝、権太楼、さん喬など一通り通過しました。
毎晩寝るときは必ず一席聞きました。
延べにすれぱ何千という噺を聞いたことになります。
その中で、さて誰か。

毎日となると、聞いていて疲れないということも大切になります。
自然に流れて身体に入ってくる落語。
無理をしなくても笑える落語…。
口跡の穏やかな噺家。
となると、やはり五代目柳家小さんということになるかもしれません。

今までに聞いたたくさんの噺家の中で、なんとなく柳家の後継者の落語を聞いていることが多いような気がします。
たくさんの弟子が奔放に育ちました。
立川談志のような鬼っ子もいますが、一言でいえば総じてクセがない。
無理して、背伸びをする必要を感じないのです。

小さんは武士も女もうまく描けなかったとよく言われます。
しかし町人はこれでもかというくらい、見事だった。
長屋暮らしの人々の喜怒哀楽が、落語の真骨頂ではないでしょうか。
そういう視点からみた時、小さんの果たした役割はとてつもない大きさを持っていると思います。

名人はたくさんいます。
しかしいつもそこに戻りたいと思う噺家は、そう多くはありません。

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