落語は「おはなし」

広瀬和生が去年の暮れに出した噺家同士の対談集『僕らの落語』(淡交社)を読みました。
組み合わせが大変に面白い。

桂米團治*柳家花緑
桃月庵白酒*春風亭一之輔
春風亭百栄*三遊亭兼好
柳亭こみち*三遊亭粋歌

最初は東西の人間国宝の身内の話から…。
ある時落語とは何かと花緑が米朝に訊ねた時、「おじいちゃんが孫に聴かせるおとぎ話」と言ったとか。
小さんも同じようなことを言っていたという小三治の話を広瀬が紹介しています。
落語は「おはなし」なんだというのが小さんの教えでした。

白酒、一之輔の対談も実に興味深かったです。
寄席でうける噺を少しずつでも積み重ねていく楽しみ…。
自分目当てじゃないお客をつかんで笑わせて、時間通りに降りるつらさ。
うけた時の落語は忘れるという一之輔。
あえて稽古はしないという白酒。
それぞれの噺家の横顔が、実によく見えました。

一番興味深かったのは百栄と兼好の対談です。
というのもお互いに学校を出てから随分と遠回りをして、噺家になった経歴を持っています。
彼らに今の落語界がどう見えるのか。
これからはすぐに芸人にならない方がいいんじゃないか。
勤め人の苦労が見えていると、お客に対して使うギャグも自ずと変化してくる。

高座の袖でじっとお客を見ながら、スイッチを入れ、どの噺が最適かを考える。
その計算が、出来不出来を決めるカギ。
前の噺家が受けている場所をじっと観察し、自分のネタを決める。
このわずかな時間にその日の生命をかけるのだそうな。
厳しい話です。

最後は女性の噺家の今後という重いテーマでした。
いずれにしても、芸の世界は底知れない深さを持っています。
その中で日々、葛藤を繰り返していくんでしょう。
落語がうまいからプロになるという時代ではない。
好きだからというだけでははかりきれない、何かがそこにはあるのだと思います。

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