なぜ「小三治」の落語は面白いのか

なぜ面白いのかと言われても、面白いものはおもしろいのです。 あえて、なぜかと訊かれれば、それは人間が描けているからということに尽きるのではないでしょうか。 どんなに面白いと噺家が思って、力を入れて喋ってみても、そこにああ、こういう人間もいるよなという共感がなければつまらない。 それが落語の魅力なんでしょう。 先代の小さんに言われた台詞、おまえの落語は面白くねえなあは、小三治の肺腑をえぐ...

一門名鑑

白夜書房が刊行を続けていた落語ファン倶楽部もとうとう廃刊になり、最後に出されたのが、この本です。 今年4月時点までの噺家が全て網羅されています。 なかでもすごいのは、一門別、師匠別に系統が全てまとめられているという点です。写真も入っていますので、名前を忘れたりした時には大変参考になるのではないでしょうか。 東京の噺家の方にかなりウェイトがかかっていますけど、そこはそれお許しいただくと...

白酒のキモチ

インターネットラジオというものが、どういう趣旨でできているのか、よく知りません。 でもあちこちでやっている。 その中の一つが、この「白酒のキモチ」です。 白酒師匠が日頃感じていることをなんでも話すというのが、どうやらそのコンセプトのようです。 今度が第4回目だそうです。 聞いた限りでは、まあ、それなりにというところかな。 一門会の様子なども録音されていて、雲助師匠以下の3人真打ちの...

神田連雀亭

古今亭志ん輔師匠が主宰の神田連雀亭。 いよいよ11日から開業ということになりました。 二つ目専門というところが、斬新です。 やっと前座から二つ目になった途端、仕事がぴたりとなくなるというのがこの世界。 高座にあがりたくても、なかなかチャンスがめぐってきません。 志ん輔師匠、若手のために一肌脱ぎました。 今までも若手のために「たまごの会」などをおやりになっていました。 たまたま...

子別れ

名作です。 こういうのを落語というのではないでしょうか。 古典落語の演目の中でも一際すぐれたものです。初代春風亭柳枝の創作です。 四代目柳家小さんの手を経て磨かれた人情噺です。 今では柳派に限らず、多くの噺家が演じます。 志ん生、圓生、小さん、志ん朝をはじめ、名人がみな自家薬籠中のものにしました。 親子、夫婦の愛情を表現するだけに、あまり若い人ではリアリティーが出ません。 それだ...

吉朝庵

上方の噺家についてはあまりよく知りません。 どうしても江戸落語に傾きがちなのは、東京の文化により親しんでいるからでしょう。 しかし落語の稽古を始めてみて、予想以上に上方の噺が江戸に流れこんでいることを知りました。 もちろん題名だけでなく、場所も設定もかえてあり、さらには登場人物の名前も違います。 しかし笑いに対する感覚の鋭さには、あらためて舌を巻きました。 上方の落語は大...

落語こてんコテン

以前に『落語こてんパン』の紹介をしました。これはその続編として出版された本です。 例によって50本の噺が紹介されています。 ポプラ社のウェブマカジン「ポプラビーチ」の連載を加筆訂正したものです。 内容は町内の若い衆、かぼちゃ屋、唐茄子屋政談、親子酒、宿屋の富、御慶、幇間腹、棒鱈、花筏、七段目など。 さらに死神、王子の狐、宮戸川、へっつい幽霊、花見の仇討ち、締め込み、紀州、権兵衛狸、百年目、...

宗論、かんしゃく、堪忍袋

「宗論」「かんしゃく」といえば、今や古典の部類に入る噺です。 先代文楽の「かんしゃく」や小三治師匠の「宗論」を聞いていると、実に愉快そのものです。 しかしできたのはそれほどに昔のことではありません。 作者はだれかといえば、ここにあげた益田太郎冠者その人です。 実に人をくったような妙な名前です。本名は太郎、1875~1953。 三井財閥の重役であり日本美術の一大コレクターだった鈍翁益田...

親子で楽しむ落語の時間

落語は親子で楽しむものなんです。多分。 寝る前に親が枕元で話して聞かせ、子供が時に笑いながら、安心してすやすやと寝る。 童話とおんなじです。 ところでもっとすごい本が講談社から出ています。 『決定版 心をそだてる はじめての落語101』というのがそれです。 高田文夫が書いています。 3000円以上もするので、ちょっとすぐに手が出るような代物ではありませんが...。 評判は大変にい...

円朝の女

松井今朝子の本は以前にも『仲蔵狂乱』を題材にして、この欄でも紹介したことがあります。 この『円朝の女』もそうした系譜に属する本の一冊です。 ただし書きぶりは直木賞受賞作『吉原手引草』の方に近いかもしれません。三遊亭円朝という噺家に関わった5人の女性が登場人物です。 語り手は彼の近くにいた元噺家、五厘と賤称された今でいえばマネージャー格の男です。一人息子朝太郎を産んだお里という人もすごい人物で...